昔から発酵文化が根付いている長浜をはじめとする湖北・湖西エリアでは、酒蔵やしょうゆ蔵などが今も点在しています。この特集では、そんな「発酵」にまつわる「発酵スポット」や「発酵人」をご紹介していきたいと思います。
前回に引き続き、長浜・木之本の北国街道沿いにあり、地元民だけでなく観光客にも人気がある「ダイコウ醤油(しょうゆ)」を取り上げます。
1852(嘉永5)年創業の老舗しょうゆ店「ダイコウ醤油」は手造りしょうゆ、しょうゆ醸造場として始まりました。約170年たった今も昔ながらの天然醸造にこだわるしょうゆを造り続けています。店の骨組みは創業当時のまま残っており、手前が店舗、奥がしょうゆ醸造所になっています。
「造り手の顔が見える商品づくり」を大切に
初代の大杉小平(利助)さんが創業後、伝統と経験を元に、商品開発や製造方法に改良を加え、その味と風味を守り続けています。
しょうゆ造りは順番に、「一麹(いちこうじ)、ニ櫂入(にかいいれ)、三火入(さんひいれ)」という工程があるといいます。具体的には、「雑菌が繁殖しにくい冬場の1月・2月に蒸した大豆と小麦を合わせて種麹をつけて3日ほどかけて麹造りを行い、それを塩水を入れた杉おけに移したのち後、2~3年かけて手入れをしながら長期熟成をして、絞り、火入れをする」という、じっくり時間と手間をかけた工程でしょうゆが完成します。
昔から変わらない「良品多種少量」をコンセプトにしょうゆ造りを続けています。6代目の大杉憲輔さんは「杉おけがあるもろみ蔵には、目には見えない微生物がいて、その店の味を決めている」と話します。
店の一番売れ筋商品だという「杉おけ二年熟成しょうゆ(こい口しょうゆ)」。ラベルに日本の伝統色「灰桜(はいざくら)」を使い、色名が商品名になっています。杉おけでじっくりと約2年熟成したもろみを使っています。刺し身・卵かけご飯、焼き餅、あゆの佃煮などに合うといいます。
杉おけで3年熟成もろみを使った「杉だる三年熟成しょうゆ(こい口しょうゆ)」。ラベルに日本の伝統色「亜麻色(あまいろ)」を使い、色名が商品名になっています。2年熟成よりもコクがあり、刺し身・冷奴・卵かけご飯、おひたしなどに合うといいます。
しょうゆ煎餅、ポン酢、白だしなど、関連商品も多数扱う同店。中でも大杉さんのお薦めは焼きおにぎりのタレ。「温かいご飯に混ぜて焼くだけで簡単に焼きおにぎりができ、軽いので、お土産にも人気がある」そうです。
ー発酵の魅力は何だと思いますか?ー
大杉さん「しょうゆ造りも、麹菌、乳酸菌、酵母菌という微生物による活動のバトンリレーで完成する。微生物によって元の食材だけでは味わえない『うまみ』が生み出されるところが面白いですね」
ー特に好きな発酵食品はありますか?ー
大杉さん「麹菌の一番の敵は納豆菌。だから麹を造っている今は『納豆断ち』をしているので、今一番 納豆が食べたいですね。納豆は大粒が好きで朝食に食べることが多い。3月くらいになると解禁できると思います」
ちょうど麹造りが始まった冬季にインタビューに応えていただいた大杉さん。 私たち日本人に最もなじみ深い調味料の一つである「しょうゆ」が造られる背景に微生物の働きがあることを改めて教えていただきました。
「ダイコウ醤油」
住所 長浜市木之本町木之本1137
営業時間 9時30分~18時30分(土曜・日曜は10時~18時)
ホームページ https://www.daikou-shoyu.com/