450年以上の歴史を持つ冨田酒造(長浜市木之本)が2月19日、木おけで作った日本酒「木ノ環(きのわ)」を数量限定で発売した。
日本酒造りには古くから木おけが使われてきたが、現代では掃除や手入れがしやすいホーローやステンレスのおけに移行している。木おけ職人の数も減っていくなか、唯一大阪(堺市)に残る職人が引退すると聞いた15代目の冨田泰伸さんが、先代のころから導入を考えていた木おけをオーダーした。滋賀県内で木おけを使っている酒蔵は現在、同酒造を合わせて2軒のみだという。
木おけはホーローなどと違って蔵の菌が付きやすいため、例え他の蔵で同じ材料で作ったとしてもできあがるものに違いが出ることや、ほのかに木の香りがする日本酒ができることが特徴。
商品名の由来は、「酒蔵は日本酒を造るだけじゃなく、日本の伝統や文化が凝縮しているもの。木おけを使って伝統を受け継ぐことで、木おけ作りの職人が増えるかもしれないし、木は廃材になっても自然に還る素材であるなど、木を軸に伝統や人、環境の循環を起こしていければとの思いを込めて『木ノ環』と名付けた」と冨田さん。
「お酒の味はもちろん、その背景にある木おけのことや、職人技が今も生き続けているということ、原材料の米を作る長浜の農家や地域の風土を感じながら楽しんでもらえたら」と利用を呼び掛ける。
価格は1,760円(720ミリリットル)で、初回生産は1250本(数量限定)。次回は4月末ごろに発売予定。同酒造のほか全国の主要酒販店で扱う。