長浜で仏壇仏具の製造販売を行う「渡辺美術工芸」(長浜市三ツ矢元町)が11月13日、店の一角で漆器を扱う「渡辺久七商店」を始めた。
1921(大正10)年に初代の渡辺久七さんが仏壇仏具の製造販売を手がける「渡辺仏壇店」を創業。2010(平成22)年、3代目の嘉久さんが「渡辺美術工芸」を設立し、山車などの文化財修復、工芸品の企画製造販売にも業務の範囲を広げてきた。
12年ほど前に長浜八幡宮の前で陶磁器などを扱うギャラリーを経営していたが、病気や本業の忙しさから5年前に閉店。「いつか再び、ギャラリーを始めたい」という思いを抱いていたという。
昨年、仕事が一段落したことや子どもの独立のタイミングが重なり、渡辺美術工芸の一角で同店を始めることにした。漆職人である嘉久さんが作る漆器を中心に、木工品や陶磁器などを扱っている。手がける漆器は長浜に昔から伝わり、一度は途絶えた「常喜わん」を10年前に復活させて以来、作り続けているものだという。
嘉久さんは「常喜わんは浜仏壇や曳山(ひきやま)のルーツになっていると思う。昔は上等な漆器ではなく、柿渋の上に漆を塗ることで漆を節約していて、剥げやすく耐久性が低かった。現在、私が作っている常喜わんは漆だけを塗り重ねて、耐久性を第一に考えている。長浜の漆文化を今後も残していきたいという思いで作っている」と話す。
「漆器を使うと心が豊かになると思う。扱いづらいイメージがあるかもしれないが、気軽に漆器を普段使いしてほしい」とも。
営業時間は9時~18時。