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郷土料理「にしんと大根のこうじ漬け」 木之本・いわね書店、生産終了へ

岩根ふみ子さん

岩根ふみ子さん

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 長浜の「いわね書店」(長浜市木之本)が20年前から販売する郷土料理「にしんと大根のこうじ漬け」の生産を終了する。同店が8月23日、発表した。

にしんと大根のこうじ漬け

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 1938(昭和13)年創業の同店。1951(昭和26)年に現店主の岩根豊生さんが跡を継ぎ、その10年後、高月町出身の岩根ふみ子さんが嫁いできた。ふみ子さんは料理教室に通っていたことがあるほどの料理好きだったことから、地域の女性たちと食のグループ「どんぐり」を立ち上げ、各自の手作り総菜や菓子を販売する月例イベントを始めた。商工会議所から「地域の特産品を作るために力を貸してほしい」と頼まれたことをきっかけに郷土料理「にしんと大根のこうじ漬け」の販売を同店で始め、「どんぐり」の活動が終わってからも販売を続けてきた。

 ふみ子さんは「郷土料理は地域の気候条件に合った作物や調理法で作られているからこそ、これまで継承されてきている。新しく開発したものではなく、郷土料理に光を当てたいと思い特産品としてこうじ漬けやえび豆に特化して作ることにした。20年ほど前、書店で総菜の販売を始めた当初は珍しがられることもあったが、コンビニでも本や食べ物も売っているので普通のことだと思っている」と話す。

「にしんと大根のこうじ漬け」は、大根ができる11月以降に仕込みを始める。5日間塩漬けした大根とニンジン、ニシン、こうじをたるに仕込み、重石をのせて3週間漬ける。約1カ月ほどかけて完成するという。そのままにしておくと発酵が進んでしまうことから、ふみ子さんがおいしいと見極めたところで発酵を止めるためにたるから引き上げ、冷凍保存したものを販売している。当初は岩根家に伝わるレシピで漬けていたが、「徳山鮓(ずし)」(余呉町)の店主から助言をもらい、試行錯誤を重ねて現在の味にたどり着いたという。

「毎年20たる分仕込んでいた。高齢になり漬け物の重石を持ち上げる作業が難しくなり、こうじ漬けの販売を終了することにした。30年くらい前までは、どこの家庭でもこうじ漬けを漬けていたが、今は漬ける家庭が減ってしまった。幼いころに食べた故郷の味を懐かしみ、これまでも遠方からもこのこうじ漬けを買いに来てくれる人が多くいた。味覚の記憶はすごい」とふみ子さん。

「うちのこうじ漬けは塩辛くないので、食べ出したら止まらない。ぜひ食べてみて。漬物ではない郷土料理『えび豆』はこれからも作り続ける」と話す。

 価格は、160グラム=900円、240グラム=1,200円。営業時間は8時~18時。日曜定休。在庫がなくなり次第終了。

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