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映画「長浜(仮)」製作へ 故郷の祭りを題材に少年少女のアイデンティティー描く

コルミオ・フィルム代表兼映画作家の谷口未央さん

コルミオ・フィルム代表兼映画作家の谷口未央さん

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 長浜で映画「長浜(仮)」製作・発信を目的とする団体「コルミオ・フィルム」(長浜市朝日町)が10月下旬、長浜曳山(ひきやま)祭りを題材とした劇場用長編映画の撮影を開始する。

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 同団体の代表兼映画作家の谷口未央さんが企画・脚本・監督を務める。京都府出身で、2歳から11歳まで長浜市に住んでいた。29歳のころ、映画作りを学ぶために上京し、仕事をしながら映画学校に通った。

 2016(平成28)年、初監督作品となる長編映画「彦とベガ」が劇場公開された。長編映画2作目を考えた際に、ふるさとの映画を撮りたいと思った谷口さん。2016(平成28)年夏、「長浜曳山祭り」がユネスコ無形文化財に登録見込みであることを知ったことが映画製作を決めたきっかけだったという。谷口さんは「長浜の最大の題材は『曳山祭り』と確信。もし登録されたら有名な監督が映画化に名乗りを上げて、私が撮るチャンスがなくなると思った」と振り返る。

 2016年11月に行われた山組集会の見学から同作の記録や取材を始め、市が主催する漫画とシナリオのコンペ「長浜ものがたり大賞」に同作の原型となるシナリオ「伊吹と曳山」で応募し入選した。そのシナリオは書籍「長浜ものがたり大賞コレクション」にも収録された。昨年11月、映画製作を本格始動するため長浜市に住まいを移した。

 今年に入り、香港国際映画祭の企画マーケットに同映画の企画が入選し、世界各地から集まった28の映画企画の中で唯一の日本作品となった。

 映画は、亡き父の故郷「長浜」に初めて訪れた少年・伊吹が、成長とともに自身の性に違和を感じる少女・花と出会い、祭りの子ども歌舞伎を通じて、アイデンティティーを芽生えさせ、父とその不在へ向き合っていく物語。劇中劇である子ども歌舞伎の演目は、近松門左衛門作「平家女護島(にょごがしま) 俊寛 鬼界ヶ島の場。

 9月上旬にキャスティングが決まり、10月下旬から11月中旬にかけて撮影。その後、2024年3月まで編集し、4~5月ごろに完成。その後、海外の映画祭へエントリーを予定。来年秋以降、劇場公開を目指すという。祝町組の山車 「鳳凰山」の協力を得て撮影を進める。映画製作の資金を集めるため11月10日まで、クラウドファンディングで協力を呼びかけている。

 谷口さんは「この映画は子どもたちのアイデンティティー・多様性を、日本の伝統と文化の象徴である祭りの中で表現する点がアジアの映画祭や、海外の映画配給会社の方に評価されたと思っている」と話す。

 「2016年に取材を始めてから撮影に至るまでとても時間がかかったが、その間も変わらずに応援してくれた方たちのおかげでここまで来られた。私たちの故郷の祭りが世界中の人たちに届くように、それに見合う映画を作れるよう、精いっぱい頑張りたい」と意気込む。

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